2022年07月01日

891 彦山西方の神々を考える @ “福岡県旧小石原村”

891 彦山西方の神々を考える @ “福岡県旧小石原村”

20210526

太宰府地名研究会(神社考古学研究班) 古川 清久


九州でも彦山と言えば、国東、かつての求菩提山と並び神社研究者、神社ウォッチャー、神社フリーク…いずれもが無視する事のできない九州最大の山岳修験のメッカとも言うべき神の山でした。ただ、明治の神仏分離令、修験道への抑圧によって徐々に力が奪われ、経済的基盤を失い既に時が流れ去っています。

偶に中宮に上がると、それでも「上宮まで上って来ました…」という健脚の人を見掛けるのですが、彦山を支えた登山客も徐々にその数を減らした上に、追い打ちをかけるかのように水害が襲い、なけなしの日田彦山線の事実上の廃線化がとどめをさそうとしている様です。

暫く前までと言っても、198595年頃つまりバブル崩壊期までは、民陶ブームなるものが存在し、高取焼、隣県の小鹿田焼と併せ、バスで乗り付ける陶器購入者が週末になると押し寄せる現象が数十年程は続いたのでした。

その頃までは、敵意あるエヅラ・ヴォーゲルが「ジャパン・アズ・ナンバーワン」なるベスト・セラーを公開し、一時は東京都下の地価だけでも米国を買う事が出来ると言った馬鹿話が普通に飛び交っていたのでした。

ところが、中曽根内閣以来の米国による日本経済潰し、その完成としてのバブル崩壊から小泉竹中による日本の国民経済の破壊が凄まじく、所得の半減、郵(貯)政のアメリカ金融資本への売り飛ばし、外資の土砂降り的侵入…によって、日本経済は二度と立ち上がれないほどの犠牲を強いられたのでした。

その背後にはこれまで顕在化する事無く雌鶏を太らせ、一斉に首を刎ねた米国民主党の意図があったのでした。

もともと、マッカーサーの占領政策の下、日本が弱かった時代は放置され、経済復興によってアメリカ経済を脅かすようになれば、中曽根、小泉と言うアメリカのエージェントがアメリカの希望する政策を国内で実行し徹底的な破壊を行なったのでした。日本にとって最悪だったのはあの真っ黒いオバマでした。

結果、書道教室、華道の先生、お茶の先生、ピアノ教室、民陶教室、三味線、太鼓、お謡いのオッシサン(師匠)…が全ての糧を奪われ、ヤマハ・ピアノ教室などどこでも開店休業状態にあるのです。

国民の懐に余裕がある時には、各々の趣味に合わせ多くの購買力を示し、それで第五次産業とでも言うべき必ずしも必要ではないものへの消費が都市住民から向けられていたのですが、それらが全て吹き飛んだのが2000年以降の経済的大停滞だったのです。

要は必ずしも必要の無い様なものへの消費行動を産んだ国民所得の増大から激減が今日の民陶ブームの消失だったのでした。

今回、冒頭からなんでこんな話をしたかと言えば多少の理由があります。この彦山西麓の民陶の里小石原村の神社を書く必要が生じたからでした。それは、当会の神社トレッキングに最近参加された方にこの関係者がおられたからでした。民陶ブームの衰退は各窯元の経営にも深刻な打撃を与えている事でしょう。

ユニクロの様に労賃の安い大陸の労働力を利用し、デザインと色彩だけを指示するのであれば、真面目に生産する業者を一気に容易に出し抜けることになり、この抜け駆け生産ができればこの危機を一時的には乗り越えることができるのです。ただ、これは金のために職人から商売人に成り下がる事なのです。

事実、有田焼の陶器(ほとんど磁器ですが)市では、ほぼ、30年前から、中国の景徳鎮に発注したもので、国内生産の十分の一のコストで造られた有田焼なるものが並べられ始めていたのです。

無題.png勿論、全ての業者がそうやっている訳ではないのですが、騙されているのは有田焼のブランドを信じた上で従来程度の単価で買わされている一般客だけなのです。

しかし、彼らも所得が下っている以上お買い上げが低下している事は想像が着くのであり、いずれはこのユニクロ方式も効果が失われる事になるのです。

ましてや、民陶となるとさらに危機的で、中国に発注して作らせた手作りの味を持った陶器など有りえないのであって既に逃げ場が失われているのです。

この経済現象は、購買者の所得が竹中によって半減されたまま全く上がっていない事によって息が止められた事になっているのです。

既にそうでなくとも、プラスティック容器や発泡スチロール・トレイに電子レンジと鋏で食事をする新世代が登場する中、伝統的工芸品である陶器産業がそのまま生き残る事ができるとは思えないのです。家庭の団欒が失われれば民陶など生き残れないのです。

所得水準を上げ(池田内閣の所得倍増政策こそ要求されますが)国民の懐を豊かにしない限り復活は有りえないのです。当然にもGDPを押し上げ、所得の維持ではなく増大させるべきなのです。

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既に、日本人の経済的余裕と連動する文化的生活の一切が消失しつつあるのです。

それを象徴するのが不要なピアノの買い取りを行なう業者の繁盛ぶりです。

祖母、母が使っていたピアノでしたが、本人は家族の所得の低下によってピアノ教室に通わせてもらえず、邪魔になり埃を被っていたピアノが財津一郎あたりの業者の宣伝にのった回収(殆ど無料に近い)によって、シンガポール、インドネシア、ベトナムなどに持って行くと560万円でボロ儲けできるのです。

結局、ユニクロの裏バージョンなのですが、いずれにせよ日本文化の裏と表の両面から破壊が進行しているのです。

“今回、冒頭からなんでこんな事を書いたかと言うと、この彦山西域の民陶の里小石原村の神社を書いて見ようと思ったからでした。とりわけ神社トレッキングに最近参加された方にこの関係者がおられたからでした。

民陶ブームの衰退は各窯元の経営にも深刻な打撃を与えている事でしょう“と前述しましたが、今回のプロジェクトは、この沈滞著しい小石原村の再生を願う陶芸家の思いに多少ともお手伝いできるかもしれないと考えたものでした。この地が如何なる場所であり、如何なる人々が住み着いた土地であるかを浮き上がらせることができれば目的は半ば達成されるのであり、その程度の論考としてお考え下さい。

小石原の陶器の起源については幾つかの説があるようですが、戦前までは小さな窯元が幾つかあっただけで、それまでは彦山詣での帰りに何がしかの焼き物が売られていただけと言われています。

戦後も昭和30年代辺りから始まる民陶ブームまではこれほどまでの規模にはなっていなかったのです。

ただ、多くの窯元が国道そばに大きな駐車場を設え、増大する在庫を受入れる倉庫兼販売所を造るに及び、陶器が流れるように売れたのは昔の話であって、今や建物の維持にも窮する状態になっているのです。

一部には、嘉麻峠に近い遠賀川源流に近い某窯元の販売所が中国資本がバックにいる団体(孔子学院の二番煎じの道教=TAO)に買われている始末で、北海道と同じ現象が既に結実し水源が抑えられているのです。

このように危険な国際情勢の変化もさることながら、長期的に陶器が売られ続けられる環境が保たれるのかと考えると、将来性はどのように考えてもかなり難しいと思わずにはいられません。

日本経済の再生=国内循環の復活頼みとしか思えないのです。これについては新たな光が既に刺し始めており、いまだ顕在化しつつある段階ですが、この動きが効奏するかどうかは微妙で予断を許しません。

それは、戦前のような軍需生産への復帰であり、民需を抑制し、軍需シフトを採るだけで良いのです。

簡略化して言えば、海軍工廠、陸軍工廠の復活であり、航空廠、宇宙廠の新設なのです。

ともあれ、まず小石原の神社をどう考えるかを概観してみましょう。


彦山連峰西域の小石原の神々について


彦山と聴いて誰が祀られているかを即座に思い浮かべられる人はなかなかいないでしょう。

もし、僅かおられたとしても、修験道の山神仏混交のイメージで留まられる方が大半ではないでしょうか?ただ、小石原にそれほどの神社がある訳ではなく、バラエティに富んだ地域でもないのです。ただ、実際には殺伐としています。それは彦山山岳修験の影響が余りにも強く、それ以外の神があまり拾えないからです。それでも実際の現場は違うかも知れないので徐々にフィールド・ワークを重ねたいと思います。

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まず、白石山が目立ちますね、これは小石原焼が磁器生産に進もうとして挫折した事に因む物なのか、石灰岩の目立つ山なのか憶測が過ぎますが意味が分かれば面白いとは考えています。

普通に考えればこの山名は南の朝倉郡から付されたものなのでしょう。

一方、かなりの水田稲作の面積もあり、いわば彦山の食糧倉庫と言った場所なのかも知れません。

小石原村の神社をグーグル・マップで見ればお分かりの通りで、高木神社=大行事社が制圧している事は一目瞭然であって、これが私もこの地域の神社を見て廻ろうと思わなかった理由なのです。

当然、他の神社は排除され、或いは祭神が入れ替えられるなりしているはずで、何よりも排斥された神々その末裔であるはずの人々を哀れに思わざるを得なかったからです。以下は「福岡県神社誌」です。

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「福岡県神社誌」中巻41p


  これ以外にも神社があるはずなのですが、「神社誌」も採録していません。全く頼れないのです。

  とりあえず動員できる手掛かりとなる資料はこの程度で、後は村史などを調べ個別に見て行きます。

posted by 久留米地名研究会 古川清久 at 00:00| Comment(0) | 日記
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